2015年3月19日木曜日

バスルームで髪を切る100の方法

僕はバスルームでシャワーを浴びながらこの文章を書いているが、さすがにノートパソコンの置き場所が不安定すぎて疲弊している。
浴槽に蓋をするやつがあれば一番いいのだけど、ウチには蓋がないのでミニ四駆が一台通れるか通れないかくらいの浴槽の縁にバランスを取りながらそのノートパソコンを置いているわけだ。


髪を切った次の日は学校を休む。
そんな奴が中学の時にいた。
僕は彼の気持ちがすごくわかっていたし、僕だって休めるなら休みたかった。

時はさかのぼり小学校時代、なぜか僕のクラスだけ男のロン毛が流行っていて、卒アルを見れば男子の三分の一くらいがロン毛で、おまけにナイキのヘアバンドをしていた。
なんと僕もその一人だった。(ほんと変なクラスだった)

そして、中学入学と同時に髪の毛をバッサリ切った。
これには社会的体裁以外の理由があった。
建前として、もう小学生じゃねぇんだからって髪を切りに行ったけど、本音は悪い噂に怯えたからだ。
一年生が長髪や茶髪で学校に行ったりなんかしたら、確実に先輩にシメられるというステレオタイプの噂だ。
僕は当時から面倒ごとが嫌いな性格だったし、喧嘩なんてした事もなかったから、素直に目立たないように振る舞った。
結果として僕は見事に目立たなかった。
顔立ちが整っているわけじゃないから、髪が短いと凄くモブキャラっぽくなってしまうのだろう。

それでも入学当時は目が隠れるギリギリまで前髪を残して、KOF97のシェルミーみたいな(知らん人はググって下さい)感じで思春期を隠していた。
ある日、母親が美容院に行くと言い出したので、なんとなく僕も付き添った。
床屋しか行った事がなかったから、ちょいと背伸びして美容院に行ってみたかったからだ。
当時飼ってた室内犬と、行かなきゃよかった。って後悔を、玄関に残して。

美容師さんは母親の友達らしく、関西弁のおばちゃんをそのまま津軽弁にしたようなテンションだった。
僕は見つけるなり土足で僕の玄関までやって、慣れたように僕を座らせた。
そして、刹那。

じつに中二っぽい言い方だが、これは中一の時の話だ。

刹那。

そのおばちゃんはハサミをカミソリに持ち替え、一瞬にして僕の前髪を切り落とした。
クラムボンの原田郁子みたいに切り落とした。
「どう?いいでしょ?」
そのおばちゃん的にはかなり満足のいく出来だったらしいが、僕は救急車を呼びたい気分だった。
「あっ、はい」
しかし、気の弱い僕は太宰治がお父さんからのお土産を喜んだ時のように、その前髪を気に入った振りをした。
ところが、僕は太宰治ではないため、帰りの車の中で母親に本音を伝えた。
「正直、この前髪は変だと思う」
母親は非常に困った顔をしながらも、帰り道にドラッグストアーに寄ってワックスを買ってくれた。
ワックス自体が全然解決策になっていない事も悟りつつも、まだ子どもだった僕は母親が僕を気遣ってこういう行動を起こしてくれた事が素直に嬉しかった。

翌日。
一緒に学校に行く友人グループと合流すると、ガキ大将的なやつに死ぬほど笑われ、他の奴も同じように笑い始めた。
言い忘れていたが、僕は前髪以前に自分の天然パーマもコンプレックスで仕方なかったのだ。
髪が長い内は誤魔化しがきくが、短くなるともう全裸で外を歩くような恥ずかしさを見舞う。
まあ、この頃から自意識過剰だったのだ。
少しでも前髪やもみあげがうねってると、みんながそこを見ているような気がしていた。
僕は運が悪くそのガキ大将とたまたま同じクラスだったので、教室に入ってもまだ僕の髪型をいじる時間が続いた。
地獄みたいな一日だった。

そのガキ大将をのちに陰湿な手口で三学期までにハブにしたという話はまた別の話なので、ここでは割愛する。

僕は帰宅するなり、もう一回違うところで髪を切りたいと母親に強くお願いした。
母親は僕の気持ちをすぐに悟ってくれたみたいで、髪を伸ばす前まではいつも行っていた床屋に連れて行ってくれた。
阿呆なババアだなっていつも思ってるけど、この文章を書きながら「いい母親じゃないか」と再確認して少し感動して泣けてきた。

結局、気の知れたその床屋さんと話し合い。
もういっそ中田英寿くらい短髪にしてリセットした方がいいという話になり、思い切ってそれをお願いした。

翌日、トイレで鏡を見る回数は増えたけど、もうどんな風にからかわれようが覚悟は決まっていたので、髪が伸びてくるまでとにかく気にしない!と強く自己暗示をかけた。
小学校から一緒だったやつは僕の短髪を初めて見たはずだからとても驚いていたけど、昨日みたいに笑われる事はなかった。
多分だけど、美容師のおばちゃんはかなりセンスがなかったのだろう。

腹に力を入れて自分の覚悟を再確認した。
これは隠し切れない思春期なのだ。
僕は変に気合いを入れてコンプレックスと戦っていた。

そんな場面に現れたのが担任教師だった。
僕にちょっと話があると言って渡り廊下に呼び出した。
僕は目立たない生徒だったから心当たりがなく、トイレで鏡を見ててチャイム着席が遅れた事くらいしか罪が思い浮かばなかった。
「お前、天パーで悩んでんだって?」
担任教師はそんな風に切り出した。
僕が誰かに漏らした愚痴かまたはクラスの雰囲気か、二日連続で髪型が変わった事への心配か、担任は僕を励ますためにわざわざ呼び出したらしかった。
「先生だって天パーなんだ!そう気にすんな!」
そう言って肩を叩かれた。
今思えば、これがこじらせた思春期の扉をノックされた瞬間だったかもしれない。
気にしない!って覚悟を決めたものを他人から気にすんな!と言われる事がこんなにも腹立たしいとは。
もちろん、担任には悪気がないのだろうけど、僕の担任に対する信頼は習いたてのマイナス計算で底の底まで落ちた。

あれ、シャワーを止めた筈なのに顔がびしょ濡れだぜ。


























ハハノシキュウ専門ショップ
「病気かどうか発破を掛けろ」